禿じいが教えてくれたこと

4/4

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
俺たちはみんなで禿じいのお葬式に行った。 遺影に映った禿じいはとても穏やかに微笑んでいた。 そして禿じいの死に顔も見た。 随分痩せこけてしまってはいるが、以前とあまり変わりがなかった。 今にも起き上って、説教してきそうな感じだった。 葬式の最中もずっと違和感があった。 つい最近まで一緒に働いていた人間が死んでしまった。 人間の死とはこんなに簡単に、あっさりと訪れるものなのか・・・。 禿じいは最後まで何を考えていたんだろう? やっぱりまだ死にたくないとか思ってたんだよな・・・。 なぁ、禿じい。 死ぬってどんな感じなんだ? あの世って本当にあるのかよ。 やっぱりまだ、死にたくないって思いながら死んだのか・・・。 別に悲しくはない。 けど、尊い。 俺はあのおっさんが嫌いだと思ってた。 でも、あの人はあの人なりに頑張っていたんだと思う。 それから一か月後。 俺は会社を辞めた。 そして、一年後。 何故か俺は禿じいの墓の前に居た。 俺は今、介護の仕事をしている。 もちろん、給料も安くて体もキツイけど毎日結構やりがいを感じている。 自分でも何でこの業種を選んだのかよく分からないけど、これからも今の仕事を続けていきたいと思っている。 禿じい・・・。 俺は今、あの時あんたが言ったように、死ぬとき後悔しないように生きていきたいと思ってる。 俺はそっと、禿じいのお墓に手を合わせた。 あなたが教えてくれたことを無駄にしないように・・・。 なんだか、聞きなれた説教が聞こえてくるような気がした。                                      終わり
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加