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禿じいが教えてくれたこと
「おい!木島!!何だ、この書類は?書き直しだ、書き直し!!」
うぜ~、めちゃめちゃうぜ~。
「はい、申し訳ありません。今すぐ書き直します。」
「全く!これだからゆとり世代のガキどもは。さっさと書き直せよ!!」
「はい。」
俺の名前は木島雄一、二十六歳。
大学を卒業して今の会社に入社して四年目。
特にやりたいこともなく、何となく今の会社を受けたら採用されたから働いてる。
本当は営業職なんてやりたくもないけど、なんやかんやで四年目になってしまった。
毎月“辞めてやる”って思いながらよくここまで頑張ったと思っている。
でも俺には最近悩みがある。
そう!それがこの禿じじい!村沢だ!!
再雇用だか何だか知らんが、とりあえず偉そうな感じの嫌なじじいだ。
今年の人事異動でこのじじいと働く羽目になっちまった。
何かと言えば“ゆとりゆとり”って若い連中を馬鹿にする、昔営業所の支店長をしていて引退してから再雇用で働いている為、他の誰よりも偉そうだ。
他の若い連中からも上司からも煙たがられている存在。
そして、なぜか今の支店で俺が一番若いせいかやたら俺ばっかり注意してきやがる。
今まで何とか上手くやって来たのにこのじじいのせいで・・・・。
「はぁ~あ・・・。」
俺は会社の屋上でタバコに火をつけた。
一服しているときだけはあの禿じじいのことを忘れられる。
「お前また、禿じいに怒られてたな~。」
「おう!綾瀬、お疲れ~。」
俺と同期で3つ上の綾瀬は年が近いせいかなぜか仲がいい。
たまにこうやって一服しながら、屋上で雑談する。
「ほんと参ったよ、あのじじい。若いってだけで俺の事目の敵にするんだぜ。」
「お前も大変だよな~。」
綾瀬はタバコに火をつけながら言った。
「まったくあの禿じいもう年なんだからさったと引退しろよな!!」
村沢は他の連中から禿じいと呼ばれている。
だから、俺もたまに呼んだりしている。
「でも今年で73歳だろ?よくやるよな、あんな年まで働くなんて。俺だったら絶対優雅な年金暮らしするよ。」
「支店長やってたときの退職金たんまり貰ってるだろうに。なんでまだ働きたがるんだ?」
「さぁな~、でもあのじいさん胃癌らしいぜ。」
「まじで!?」
あまりの衝撃に俺は耳を疑った。
「ああ、噂で聞いたんだけどステージ4で結構危なかったみたいだけど、入退院繰り返して何とか生き延びてるって噂だぜ。」
「へ~、全然そんな風に見えないな・・・。でもよくそれで働こうとか考えるよな、家に居てじっとしてろって感じ!!」
「家にずっと籠ってると逆に不安になるんじゃね?気晴らしに仕事でもしてらんないとやってらんないんじゃないか?」
「ふ~ん、俺にはわかんね~な~、病気だったら尚更仕事なんてしたくね~や!!」
俺は思い切りタバコの煙を吐いた。
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