歩む

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

歩む

 震災の影響を受けた卒園式。コロナの影響を受けた中学の卒業式。  思い出をかき消す程に大きな衝撃が私達の別れの時期には訪れる。  どれもこれも仕方ないことだ。私にはどうすることもできない。  「来週の月曜日から臨時休業になります。」 その放送は、突然にやってきた。  私達の卒業までの残り1週間の生活があっという間に流されて、かき消されて何処か別の世界に行ってしまった。  あれほどなまでに苦痛だった学校生活。毎日同じように過ぎていった同級との日々はもうない。  頭の中は、もう真っ白だ。残りの1週間でやりたいことが沢山あった。  政府の決定だから仕方ない。そう処理は出来なかった。  友と学んだ教室はきっと今頃は静まりかえっている。校庭も1人の遊び人をも許さない。  思い出なんて…と頭をよぎる。  そして、今なお続く暗黒なウイルスとの戦い。諦めることも一歩の緩みを出すことも許されない。  もう後ろを向いて立ち止まっていては駄目だ。駄目なのだ。  信じたくもない現実に現状に背を向けることは許されない。  だから、今日も歩いて行くのだ。不安定で、信じられない現実の中を。自分自身の足で。自分自身の意思で。  どうか、世界平和が戻ってきます様に。  いや、そんなことは綺麗事だ。本当は、そんなことを考える余裕はないはずだ。  だから、せめてこれだけは、と祈るのだ。  私自身の生活が元に戻りますように。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!