「叫び」

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 それから私の第一次駄菓子ブームが始まりました。午前の緑茶用にきなこボウを、午後のコーヒータイムに若いドーナツ、そして晩酌のお供にやっちゃんいかと○○次郎、串にささっているものとビックリとんかつをまとめ買いしました。  この習慣は毎日続きました。そう、おいしいのです。そして飽きないのです。あいだに野菜と果物も挟んでいるので猶更です。あんず系やカリッカリな梅や桜色だいこんが、私の舌にいいアクセントをもたらしてくれました。  一か月後、私は近所の温泉に向かいました。安月給な私のささやかなぜいたくです。休日料金が癪ですが、ここでサウナや打たせ湯を楽しんだ後、湯上りに瓶牛乳をぐっと飲み干すのがたまりません。もちろん、腰に手を当てて、小指を立てながらいただきます。曾祖母伝来の作法なのでした。  その日もたいへんいいお湯でございました。私は満ち足りた気分で湯殿をあとにし、脱衣所で身体と髪を乾かしました。ここで牛乳・・・・・・の前に、ヘルスチェックタイムがあります。そうです、アレです。アレなんです。  その機器の前にはビールのポスターが貼られています。おっぱいの大きなお姉さんがきわどい恰好で朗らかに笑っています。ぶりっ子ポーズで、片手には巨大なビールジョッキを掲げている、よくある構図です。南国の島で、こういうお姉さんと飲んで笑ってはっちゃけたら、どんなに素晴らしいでしょう。まあ私の容姿と交友関係と収入では無理な相談ではありますが。  私はそれに乗りました。前月比、プラス・・・・・・10kgでした!  私は思わず叫びました。目の前のポスターが、ムンクの「叫び」に見えました。まるでぶりっ子ポーズのお姉さんが、私の叫びに耳を塞いでいるように見えたのです。  どうです、おそろしいでしょう?
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