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「ねえ、島ちゃん。あたし好きな人ができたかもしれない」
病院につくと、さっそく島ちゃんに報告した。
「ええっ、マジで? いつのまに?」
「今のまに!」
六人部屋の病室のはしっこで、あたしたちは笑いあった。
細く開けた病室の窓から、春風がやさしく吹き込んでくる。
「いいなあ。あたしも見てみたいよ、その相澤千歳くん!
きっと素敵なひとなんだろうね」
島ちゃんが、バスケットのアレンジを眺めて、目を細める。
「夢香、がんばれ。仲良くなれるように、いっぱい店に通わなくっちゃね」
「そんなに店に行ったら、変じゃないかな?」
オドオドと尋ねると、島ちゃんは明るく笑った。
「大丈夫大丈夫。お客さんなんだから堂々としてたらいいよ。
まずは明日! 靴下買って、返しにいきなよ!」
「えっ。明日?」
「うん、それで色々聞きだしてくること。その王子は、アルバイトっぽかったんでしょ。
どこの学校か、聞いてみなくちゃ!」
「え? き、聞けるかなあ……」
「聞けるよ! がんばれ!」
島ちゃんが白い歯を見せて笑う。
背中をどんっと押してもらった気がした。
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