作る・概念

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お盆前の夕暮れ、公園。久々に陽炎を見た。 無邪気な子供達に憧れながら、ベンチに腰掛ける。私とSの計画は順調に進んでいた。 「ツリフネ様、居るね」 Sに編んだ聖典を印刷・胡蝶装したものを渡すと、彼は一文字一文字なぞるように眺めてから感慨深そうにそう言った。 思いつきで作ったエピソードも、ツリフネ様と結びつけて眺めると十分まともに見える。ましてや、私やSの想いが具現化した教えは、ツリフネ様の力を借りることで、予想以上にすんなりと賛同することが出来た。 自分の言葉は大切に出来なくても、ツリフネ様の言葉なら大切にする。虚構の神様でも人をこんなに強くすることが出来るものか、と自らの作品に畏怖した。 「生んだね、神様」 「生んだね」 人生でもう二度としないであろう会話だ。 この言葉を口にした時に、私はやけに口元が緩んだ。Sの方を見やると、彼もそうだった。初めて自分達のことを信じられた気がして。そして0から全てを作りあげられたことが嬉しくて。
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