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「見せびらかしてやりたいですね、家族とか友達とか、あの方とかに」
Sはこれまでになくにこやかに言う。
「それじゃ意味ないじゃん」
「そうだけど、勿体なくない?」
「それは確かに、…いやでも、秘密だからいいんだよ、こういうのは」
「三理くらいある」
行政無線の割れた声が、良い子に帰れと言っている。空っぽになった公園で、少し遊んだ。
馬鹿なことはいつだって楽しい。宗教でも何でも、馬鹿なことを一緒に出来る仲間は何より愛しい。宗教の醍醐味をこんな所で感じる事になるとは。
「ホームセンターってどこにあります?徒歩圏内にある?」
「ないと思う」
「えー、詰んでる」
「ネットでいいんじゃない、祠の木材と釘とかでしょ?道具はあるよ」
「親にばれません?…まあ、やりますけど」
そう、後は祠だけ。私の家が少しだけ辺境にあって、丁度私有地の山があるので、そこに建てることにした。
祠を建てることは、ツリフネ様の具現化であり、信頼出来る場所の具現化だ。結局何処かへ行ってしまうかもしれないツリフネ様を、心配性な私達は繋ぎ止めたかった。
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