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程なくして山の入口に着く。
「ちゃんと山だね」
「そうだよ、言ったこと守ってる?」
「長ズボン、運動靴、虫除けスプレー」
「よし、行こう」
ほぼ手付かずの山に、獣道から足を踏み入れる。
森はやはりどこか神聖で、いつも気を抜くと死ぬんじゃないかと思わされる。ただの山だけれど、神様の住処には相応しそうだ。
「親に見つかると嫌だから奥の方行く、迷わないよう道覚えてて」
「は、この山初めてなのは私ですよ」
こうして山を登っていることも、私達二人の秘密。黙って山を登るうちに今までの秘密がフラッシュバックしてくる。
やりたいこともないのに大学に行ってしまって、社会人になって、そしたらこんなシーンには戻れないだろうか。それでもツリフネ様は消えない。確かな何かだけを求めて、危なげある足を動かしている。
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