二人の鬱屈・ダイジェスト

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二人の鬱屈・ダイジェスト

思い返せば二人、中々宜しくない高校生活を積んできた。 会ってからすぐ仲良くなる人もいれば、少しずつ編んでいく縁もある。私とSとは後者のパターンだった。 小中高同じ学び舎だったけれど、ずっと友達の友達という間柄。互いの性格まで認識はしていたが、頻繁に言葉を交わすことはなかった。 Sは昔から度々“哲学者”と称されていた。彼には知識があったし、論理と客観もあって、いわゆる大人びた子供だった。私はというと、優しさと穏やかさだけが取り柄のつまらない子供だった。ただ同時に、Sを馬鹿にすることだけはない子供だった。 彼は友達と上手くやっていたが、評価されてはいなかった。見てくれもぱっとしないし、媚びてもいなかったから、半ば仕方ないことだったと思う。 それでも私だけは、こっそりと彼の智を買っていた。 高一の半ばに、私とSはやっと友達になった。 その頃の私は自らのレッテルに喘ぎ始めていた。嫌いな人も出来てきていたし、なにより優しくするのが辛かった。優しくしたら優しくしてもらえる、と信じてきたけれどそうでもなかったことが一番原因だと思う。 一方で、そのためにそれなりの論理やシニシズムを会得していたので、Sとは結構話が弾んだ。他人に話すと受け流される話題を私だけはちゃんと聞くので、彼も調子に乗って色々な話題を振ってきた。 私に対しては少しずつ心を開いてくれていたのだと思う。
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