二人の鬱屈・ダイジェスト

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高二の秋、Sから最初の恋愛相談を受けた。驚くというより、「ああ、本当にそうだったんだ」と思った。 というのも、彼は少し前から、私の前で人間味のある事をこぼしていて、その中に恋愛に関する事もあったのだ。 私はSの哲学者の側面しか見てこなかったので最初は意外に感じたが、彼の内面に慣れるまでそう時間はかからなかった。それに、彼が勇気を出して弱みを見せてくれた手前、協力しない訳はない。 Sは何度も礼を言ったあとで、私に内容を説明した。 彼の好きな人というのは、確かに彼が好きそうな、教養があって、清楚で柔らかな女の子だった。 私は呼び出し方や告白の言葉などの相談に乗ったが、それより彼の恋の痛みを治療することが多かった。Sもまた、S自身のレッテルが災いし、恋愛などというテーマでは人と話すことすら容易ではなかったのである。 私は昔からには定評があったため、彼に負担を与えないようにそれらの話を聞いてあげる事が出来た。 ワンシーズン相談を繰り返し、Sはとうとう告白を決意した。
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