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「神様を作ろう」
ある日、Sが唐突にそう言った。
神様、神話、聖典、祭日、そして祠。それら全てを二人だけで作り上げて、二人だけの宗教として信仰しよう、と。傍から見れば突拍子もない提案かもしれないが、私は迷わず快諾した。
レッテルに囚われて生き続けて、友達も、先生も、家族も、なんとなく頼りに出来ない、なんとなく満足に生きられない日々。なんとなく嫌気がさして、なんとなく希死念慮を呟いてみたりして。なんとなくシンナーを吸う事は出来ないし、なんとなく自殺する事がいかに馬鹿らしいかは痛いほど理解している。だから、罰の当たらない神様に縋る事を思いついた。
自分達で神様を生み出せば、罰も何もない、それだけの理屈だった。最早恩恵など無くても良かった。否、裏切らない何かを信じられる事、何処でもいいから頼れる足場に立って生きる事、それらこそが私達にとって一番の恩恵に違いなかったのだ。
高二の終わり、春休みの事だった。
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