12人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「出来たね」
「うん、素晴らしい」
こっそり持ち出した金槌を握りしめたまま、それだけ口に出した。釘は所々斜めだし、木もまだ真新しくささくれ立っているけれど、それは些細な事だ。見よう見まねで取り付けた三角屋根の下に、短いしめ縄をつけ、二人で願いを込めて磨いた石を入れた。色々問題はありそうだが、満足のいく祠になった。
「ボタンは?」
「持ってきた」
「ボタンってそんなに取れるもの…!?」
「いや、予備のを集めてきた、ご利益欲しいから」
「あー、私もそうすればよかった」………
私の声はSだけに、Sの声は私だけに届いている。山の外には、カナカナカナカナ…という鳴き声しか響かない。
最初のコメントを投稿しよう!