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真夜中に田車は違和感を感じて目が覚めた。
体が動かない。原因は分かっているので恐怖はない。
「あの、田車さん。もしかして俺ーまた金縛っちゃったか?」
気まずそうに加藤が言うと、田車は唯一動く目を使い視線で返事をした。
「みたいだな、本当にすまねぇな田車さん……」
加藤は目をつむり、やってしまったといった顔をした。
田車は気にしなくて良いと声を掛けたかったが、話せないことがもどかしい。
「あの巫女さんの言う通りこのままだと俺、悪霊になっちまうのかな」
田車の隣に加藤は座って弱気なひとり言を続けていた。
「いや、もうなってるのかもしれないな。こうして田車さんに迷惑をかけて金縛っちゃてるし」
幽霊も夜になると弱気になるのだろうか、加藤はうなだれている。
しかし、田車は体を動かそうにも、指の1本も動かないのでどうすることも出来ない。やがて意識が遠のいて眠りに落ちた。
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