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朝になり田車は目が覚めた。夜中の金縛りが嘘のように体は軽やかに動く、上半身を起こして部屋を見渡すと、いた。
昨日と同じように半透明のおっさん、加藤があぐらをかいて座っている。
田車と目が合うと頭をポリポリかきながらバツの悪そうな顔をしていた。
「いやー、また金縛っちゃって本当すまねぇな田車さん」
「良いですよ、気にしないで下さい。加藤さんもやろうと思ってやったわけじゃ無いんですし」
年上の人間、もとい幽霊にペコペコされるとこっちが申し訳ない気持ちになるのは何だろうと田車は考えている。
「それじゃ、今日もバイト休みですし、学校も16時には終わるんで、それから美雪さんの神社に行ってみましょうか」
「おぅ、留守番は任せてくれ!」
田車は出発の準備を整えながら思い出したように加藤に言った。
「あ、それと加藤さんは悪霊じゃないですよ」
「田車さん……」
昨日の話を覚えていてくれたことに加藤は少し胸が熱くなる。
「それに、俺が悪霊なんかにさせませんよ。それじゃ行ってきます」
「お、おぅ! いってらっしゃい!」
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