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「えっ?」と言って田車と加藤は驚いた。
「私は、3ヶ月前に父を亡くしてから『私がしっかりしなくては』とずっと気を張っていたんです」
美雪は恥ずかしそうに笑いながら言う。
「ですが、加藤さんの、その、っぷ、コラ画像を…… はぁ…… 見て、久しぶりに心から笑った気がしました」
また笑いを堪えながら美雪は言い、加藤は口をとがらせていた。
「それに、私は霊感の強い方ではなくて、正直なところ幽霊って得体の知れない怖いものだと心のどこかで思っていました」
加藤の方を見て美雪はニッコリと笑う。
「でも、加藤さんのことを知って幽霊も悩んだり怒ったりするんだなって思ったら、もっと寄り添ってあげてちゃんと黄泉の国へ送り届けてあげなくちゃいけない。そう思えたんです」
「美雪さん……」
田車はそう一言だけ言って何も言えなくなった。ただ、この人は立派だなと心から思った。
「あの、遅くなってしまったんで今日は帰ろうと思います」
ふと辺りがすっかり暗くなってきてしまった事に田車は気付く。
「そうですか、私も何とか田車さんと加藤さんの力になりたいと考えていますのでいつでもいらして下さいね」
「ありがとうございます、それでは」
美雪は笑顔で見送ってくれた。夕暮れの神社に巫女さんというものはとてもノスタルジックな気持ちになるなと田車は思う。
「田車さん、いい子だな美雪さんって」
神社の鳥居をくぐってから加藤は話し始めた。
「そうですね、優しくて立派な人ですよ」
「おまけに美人だしな」
確かにと田車はうなずく。
「俺、クソコラっての作られたのは嫌だったし、笑われたのもちょっと腹立ったけど。美雪さんを笑わせることが出来たならいっかな。なんて考えたりなんだりしちゃってるわ」
「そうですか、加藤さんがそれで良いなら良いことをしたと俺は思いますよ」
田車と加藤はすっかり日の暮れてしまった街を歩く。人通りの多い場所に出たので会話はそこで自然と終わってしまった。
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