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「た、田車さん、あんた!?」
田車は立ち上がって加藤に言った。
「あなたは身寄りが無いから、だから、1人じゃ成仏出来ないって言われたじゃないですか!!」
「田車さん……」
そして気恥ずかしげにちょっと視線を落として田車はどんどん言う。
「それに、加藤さんは俺に感謝しているって言ってましたけど、俺だって加藤さんに感謝しているんですよ!?」
「え、マジか!?」
加藤はポカンとした顔をしてそれを聞いている。
「幽霊と話が出来るなんて人生で中々できる経験じゃないし、久しぶりに人と…… じゃなかった、幽霊だけど誰かと生活してちょっと楽しかったし。あ、あと、加藤さんのおかげで美人な巫女さんと知り合いになれた上に膝枕してもらえたし!!」
金縛りに遭っていて言いたいことも言えなかった状態の田車は感情をぶつけるように全部吐き出した。
「とにかく、人という字は…… いや、加藤さんは幽霊だけど、とにかく人は支え合って生きているんです、加藤さんは死んでるかもしれないですけど!」
田車は後半、自分でも何を言っているのか分からなくなってしまう。
「田車さん……」
加藤はポツリと言った。
「人という字は人の姿から出来た漢字だぜ」
「今そこツッコミます!?」
田車がビシッと言うと加藤は大笑いをする。そして次の瞬間透けている加藤の姿が更に透明感を増して、小さな光のオーブが溢れ出した。
「おわっ、何だこれ!?」
「何ですかそれ!?」
加藤は驚いていたが、田車も驚く。
そして、加藤がうーんと頭をひねって考えていると、突然ハッとして言った。
「あー!!! コレあれだ、山田さんが承認欲求満たされて消えた時にこんな感じだった!!」
「マジっすか!?」
朝から2人は大騒ぎをする。加藤はあわあわと焦っていた。
「ヤバい、俺、成仏するのか!? どうしよう、遺言とか、辞世の句とか詠まないといけないの!?」
「とりあえず落ち着いて下さい加藤さん、何かやり残したこと無いですか!?」
「特にナシ!!」
田車と加藤はそのまま待ってみるが、一向に加藤が消え去る雰囲気は無い。
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