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そして、それから5分が経過した。田車はチラッと加藤を見たがまだ消える気配がない。
やがて、10分ほど時間が経った。2人は目を開けて祈りを続けていたが、加藤が消える気配が無い、消えそうで消えない。居心地が悪そうに加藤は腕を組んでいた。
そして、15分が経つ頃、田車と美雪は祈りをやめていた。加藤はバツが悪そうに頭をかいて2人を見ていた。光のオーブは消えて、透明感も消えている。
「あっれー? おかしいなー、なんでこのシチュエーションで消えないんだろー」
「それはこっちのセリフですよ!!!!!!!」
田車は叫んで思わず美雪と加藤はビクッとした。
「え、何なんですか? 透明になって、いい感じのオーブが出て、光に包まれて、なんで成仏しないんですかあなたは!!」
「えーっと、なんでだろ?」
「何でだろうじゃないですよ!! 何でなんですか!!」
「いやー…… わかんない」
田車はため息をついたが、加藤はもぞもぞとしている。
「いや、何か俺、今すげー恥ずかしいんだけど、もう完全にさ、あの世行くつもりでいたから、最後だと思って恥ずかしいことばっかり言ってたんだけど」
「それはこっちも同じですよ!! 思いっきり今生の別れだと思ってましたよ!!」
「あのー、田車さん。加藤さんはあの世へ行くのに失敗したのでしょうか?」
おずおずと美雪は田車に聞いてみた。まぁ聞くまでもなく結果は分かっていたのだが。
「大失敗しましたよ!! この台所のおっさん!!」
「台所のおっさん言うのはやめてや!!」
「ぶぷっ、台所の…… っくくく、おっさん」
「あー、美雪さんまた笑ってるし!」
事態は収拾がつかなくなっていた。田車と加藤は言い合って、美雪はまた思い出し笑いに襲われていた。
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