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「あのー、あなた誰ですか?」
初めて田車から話しかけられたことで男はパァーッと明るい顔をした。
「いやー、俺は『加藤』ってんだ、下の名前は忘れた! お前さんは田車ってんだろ? 俺ってありふれた名字だから珍しい名字とか妙に憧れたりすんだよねー」
ペラペラと男は話し始め、田車はげっそりとした顔でそれを聞いている。
「おっといけねぇ、人と話すのが久しぶりでついベラベラ喋っちまった」
あー、はいはいと田車は適当に流して本題に入ることにした。
「えーっと、それで加藤さん? は何が目的なんですか?」
よくぞ聞いてくれましたと加藤はドヤ顔をする。元気な幽霊だなと田車は思った。
「俺の目的はただ1つ! 成仏がしたいんだ」
とりあえず悪霊の類では無さそうだと思うと、不思議ともう恐怖心も無かった。話していると加藤はただのおっちゃんだ。
「成仏したいならお寺とか神社とかを訪ねてみれば良いんじゃないですか?」
「それがなー、それじゃ俺は駄目みたいなんだよ。長い話になるけどいい?」
長い話と聞いてうーんと田車は考える。
「とりあえず汗でベトベトなんでシャワー浴びて着替えても良いっすか?」
「あぁ、そうね。ほんと金縛っちゃって悪いね!」
田車は風呂へと向かうと服を脱いで熱めのシャワーを浴びた、そして思う。
(金縛っちゃってって何だよ!!!)
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