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風呂場から出て、体を拭くと田車は部屋着に着替える。
そして、居間に戻ると、いた。
半透明のおっさん、加藤があぐらをかいて座っている。
田車の部屋に初めて上げるのは女の子でという淡い期待は打ち砕かれた。
「おっ、待ってたぜ田車さん」
手をスリスリして加藤は待ち遠しそうにしている。加藤の前に座ると田車は諦めたように話を始めた。
「それで、成仏できないってのは?」
「おぉ、そうだ、その話な」
少し難しい顔をして加藤は言う。
「何ていうか、幽霊生活が長くて、色々見て気付いたんだが、幽霊は心が満たされると消えるみたいなんだ」
「それって未練があるから幽霊になるみたいな感じですか?」
田車がそう言うと加藤は指をさしてテンション高めで言う。
「そうそれ、ビンゴビンゴ!! そんでだな、念仏やら祈りってやつは生前それを信じてた奴にしか効かんのよ」
田車は首を傾げて尋ねてみる。
「どういうことですか?」
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