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「あーつまりだな、生前に念仏がありがたいと思ってた奴は念仏で満たされるんだが、俺は無神論者って奴でね、神も仏も幽霊もいねーって思って生きてたんだよ、うろ覚えだけどもな」
そこまで言って加藤は溜息をついた。
「いやーまいったよ。『宗教やるやつは弱いやつだ』なんて思ってイキってたんだけど、こういう時困るなんて知らなくてな」
加藤は面目無さそうにうつ向く。
それを見て田車は、とりあえず神社へのお参りはこまめにやろうと思った。
「下の名前も思い出せないから家族の事も思い出せない、手がかりもなしで、しかも、どうやら俺は地縛霊ってやつらしくてな、遠くまでいけんのよー、ほんとーまいったまいった」
はっはっはと笑いながら加藤は言う。幽霊のくせに明るいおっさんだなと田車は思った。
「それで、念仏もお清めも通じない加藤さん相手に俺へどうしろと……」
「あーそれそれ、それなんだけど。なに、難しい話じゃないんだ、ちょっとしたお願いがあってな」
ここで命をよこせだの、一緒にあの世へ連れて行ってやるだの言ったら陰陽師でも呼ぼうかと田車は考えていたが、男の要求は意外なものだった。
「俺の心霊写真を撮ってくれ!」
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