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「時代の流れって奴は残酷だねぇ、昔は現像して心霊写真だったらお祓いだの供養だのしてくれてたのに、いざ心霊写真に写ってみても今は皆『デジカメ』だの『スマホ』だので、撮ったその場でボタン1つで無かったことにされちまうらしいし」
加藤はそう嘆いていた。そりゃそうだと田車は心の中で思ったが口には出さないことにしておく。
「なぁ田車さん、何か他にこう、心霊写真を世に広める方法って無いのか?」
田車はうーんと考えてみる。そして、「そうだ」と言ってある提案をする。
「広めるってんなら心霊写真を撮ってネットにアップするって手がありますけど」
「ネットってインターネットだろ? それはギリギリ知ってるけど、アップ? は分からんな」
時代についていけないおっさんだなと田車は思ったが、事情が違うらしい。
「すまん、俺って前の住人金縛っちまってからお祓いで30年ぐらい封印されていてその間のことってよくわからねぇんだ。自由になったのもつい3ヶ月前ぐらいだし、今の時代のことも浮遊霊達づてに聞いたものだしな」
それを聞いて田車は疑うような目で加藤を見た。
「成仏は出来ないのに封印はされるんですか?」
「あぁ、俺にもよくわからんが」
幽霊ってのは随分と適当な存在なんだなと改めて田車は思った。
「まぁ、今の時代ネットに心霊写真を上げればみんなに見てもらえますよ」
途端に加藤の顔が明るくなった、幽霊のくせに。
「それだ、そのネットって奴に俺の写真を送ってくれ!」
「まぁ、良いですけど……」
田車はとりあえず自分が特定される物の無い台所に加藤を立たせてスマホのカメラを向ける。
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