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仲直り
狩屋との居酒屋で一緒に飲んだ日から数日が経過した。
今日、百合子は子供の学校行事がある為休みである。大西も遠方の物件の調査で外出中であった。
店の中は俺と益留の二人きりであった。あの旅行以来、なぜか彼女は距離を取っているのか前のように頻繁に話しかけて来なくなった。
「なあ益留ちゃん、この前の来店客の追客だけど……」
「キチンと連絡取っています。明日、案内の予定です」
「それじゃぁ、ネット反響の……」
「そのお客様にも資料を送ってアポイント取りをしています」なんだか険があるよう感じるのは気のせいだろうか。
「あの……、なんか怒ってる?」上条は小さな声で聞いた。
「はーん!なんで私が怒るんですか!!」益留はあからさまに怒っている様子であった。あの一応俺って社長なんですが……。上条は心の中で呟いた。
少しの沈黙が続く。
「あのさ、益留ちゃん」ちょっとビクビクした様子で上条は声をかける。
「まだ、なんかあるんですか!?」まだ険がある様子である。
「今度の休みさぁ、一緒にユニバーサルスタジオ行かないか?」
「えっ?」一気に乙女の顔に変わったようである。
「お得意さんにチケット二枚貰ったんだけど行く相手がいなくてさ。もし君良ければ……あっそれとも友達と行くならこのチケットあげる……」
「行きます!絶対行きます!!」間一髪入れずに彼女は大きな声で意思表示した。その声で上条は驚いた。
「そ、そうか、それじゃあ今度の休みに一緒に行こうか……、それと……」
「なんですか?」益留の鼓動はドキドキと激しく脈を打っていた。
「こんな本当に俺みたいなオッサンでいいのか?」
「……はい、私……、上条さんがいいんです。あなたが好きなんです」彼女は真剣な顔をして、そして想いを乗せてその言葉を口にした。
「えっ、いや、その……俺みたいなオッサンと一緒に行っていいのかって意味だったんだけど……」
「えっ……、やだ!私ったら!!」彼女は顔を真っ赤にしてあたふたしている。
益留のその様子を見て上条もなんだか緊張してしまう。
「そ、それじゃあ、男の俺から……、えーと、恭子さん結婚を前提に付き合ってください」
「えっ!!」突然のプロポーズに益留は硬直してしまった。
「だ、駄目か……?」
「い、いいえ、喜んで……お願いします」益留は深々と頭をさげた。
「こちらこそお願いします」
まあ、色々あったけれど最後はこういう終わり方でいかがでしょうか?
おしまい
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