タンポポの小径

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タンポポの小径

春はさまざまな色に満ちている。 いつもただ急ぎ足に通り過ぎて行くだけの大通りにも タンポポが点々と 太陽のように花開いている。 その黄金色を眼で追って、 はじめてそこに小さな路地の拓けているのに気づく。 その道はずっとあったはずなのに 眼を(くら)くして歩くから、気づきもしない。 そこから先は、ちょっとした冒険。 タンポポの目印をたどるように 知らない道を歩くのは。 無機質で速足の世界から、少し遠ざかる。 上を向けば、 青い空に真っ白のシーツが干してある。 知らないのに懐かしいような 誰かの生活の匂いがしている。 異世界へ行くわけではないけれど、 いつもより少し暖かい、 少しだけ非日常な時間。 今という時間を味わえる 贅沢な時間。
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