謎の狂想曲が奏でられる夜

27/37
184人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
もしそうなら、布施医院でたくさんのお年寄りを相手にしてきた私は得意分野だ。 声を大きく、ゆっくりと… 「姫さまー!長老をですねー」 「妃芽、ちと黙っておれ。御言葉が聞き取れぬではないか」 姫さまの声が、不機嫌そうに変わる。 「宜しいですか?人見知りも大概にしていただかねば 御告げの尊さも半減致しますぞ、大明神」 …今 大明神、って言った…? 「貴方さまを尊崇するタヌキツネが、此度のような愚挙に出たのでございますよ?もっとしっかりなさいませ!」 あの大明神が ここにいるの? …姫さまは一応 謙った言葉遣いをしているけれど、説教をしているようにも聞こえる。 大明神って、万物を司る偉大で絶対的な神さまなのでは…? 「…あ、相済まぬ…ガミガミ言われると、我は萎縮するゆぇ…」 蚊の鳴くような、情けない声がする。 「大明神!」 「…月夜っ…そのように憤慨しては、さらに顔の皺が増えてしまうぞぇ…ひええっ!」 ポキポキと指を鳴らすような音がしたのは、気のせいか。
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!