184人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
もしそうなら、布施医院でたくさんのお年寄りを相手にしてきた私は得意分野だ。
声を大きく、ゆっくりと…
「姫さまー!長老をですねー」
「妃芽、ちと黙っておれ。御言葉が聞き取れぬではないか」
姫さまの声が、不機嫌そうに変わる。
「宜しいですか?人見知りも大概にしていただかねば 御告げの尊さも半減致しますぞ、大明神」
…今
大明神、って言った…?
「貴方さまを尊崇するタヌキツネが、此度のような愚挙に出たのでございますよ?もっとしっかりなさいませ!」
あの大明神が
ここにいるの?
…姫さまは一応 謙った言葉遣いをしているけれど、説教をしているようにも聞こえる。
大明神って、万物を司る偉大で絶対的な神さまなのでは…?
「…あ、相済まぬ…ガミガミ言われると、我は萎縮するゆぇ…」
蚊の鳴くような、情けない声がする。
「大明神!」
「…月夜っ…そのように憤慨しては、さらに顔の皺が増えてしまうぞぇ…ひええっ!」
ポキポキと指を鳴らすような音がしたのは、気のせいか。
最初のコメントを投稿しよう!