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まだ携帯を耳に当ててもいないのに、野太い声が聞こえてくる。
『月見山総合病院の理事長をやっている遠藤 周二ですがー!もしもーし!妃芽ちゃーん!おーい』
無視…出来ない。
「もしもし…」
『おおっ、君が妃芽ちゃん!…君と話せる日がこんなに早く来るとは、感慨深いものだ』
なんて大袈裟な人なのだろう。
『じゃ、急で悪いけど ひと月後からよろしく頼みますぞ』
「は?ちょっと待ってください!」
何で?既に決定事項にされている。
私は慌てた。
「あ、あのっ」
『うちの医事課の連中にも伝えてあるから、遠慮なく堂々と出勤してくれていいよ。サポート体制万全でいくし、なーんも心配しないで』
「私、行くなんて一言も」
『我が月見山にとって、君が来てくれる事がどれほどの意味を持つか…!ここまでは順調、問題はこれからなんだがね、ガッハッハ!』
駄目だ…この理事長さん、人の話に聞く耳を持たないタイプのお年寄りだ…
一方的に喋り始めた理事長の話は右から左に流し 渉先生に口パクで助けを求めても、先生は憐れみの顔を私に向けるだけだった。
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