謎のモテ期は突然に

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***** 「えー、患者さまの不安を失くすことは、この医事課においても非常に重要な責務であってーー」 長い長い朝礼は続く。 ずっと下を向いている訳にもいかず、時々顔を上げてはまた俯くを繰り返していた。 ーーそう、今日は月見山総合病院 出勤初日なのだ。 結局 成り行きでこうなってしまった。 あの後 里美さんに泣きついてみたけれど、申し訳なさそうに渉先生と同じ事を言われただけ。 さらには『成長した妃芽ちゃんを見たい!』などと涙ぐまれたら、もうヤケになるしかないではないか。 延々と話す医事課課長の横に立ち、職員の皆さんの興味津々の眼差しを受け止める。 ざっと見渡しても 男女合わせて三十人近い医事課職員。 皆 課長の話はそっちのけで、私の品定めをしているように感じてしまう。 居心地悪い… 「…という事で、今日から暫くの期間、望月 妃芽さんが我々の仲間になってくれます」 名前を呼ばれ、漸く私の紹介に入った事を知る。 「彼女は、布施先生のご実家の医院に勤務されています。即戦力になるものと 理事長も僕も大いに期待していますので」 なんか、ハードル上げられた。
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