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「望月さん。時間も押してるので一言だけ挨拶して」
「は、はい。望月 妃芽と申します…えっと…何もわからないので、いろいろ教えてください。よろしくお願いします」
ど緊張の中、慌ててペコリと頭を下げる。
これは切実なお願いなのだ。
即戦力?とんでもない。
こんな大きな組織で、自分が役に立つとは思えない。
やや間があって、パチ、パチ、…人数のわりに疎らな拍手が聞こえてきた。
完全にアウェイだーー
「では、皆さん今日も頑張りましょう…あぁ 望月さんは、宝井さんに付いて回って」
「はい?」
「先ず理事長室。あと、主な部署に挨拶に行ってください。ついでに建物の構造を覚えてね。迷子になったら困るし」
それだけ言うと、課長は慌ただしく医事課から出て行った。
するとそれを合図に、皆さんが一斉に動き始める。
課長と入れ替わりに数人のナースが中に飛び込み、受付け担当者はカウンターへ移動し、何か膨大な資料の束を抱えた数人が 奥の部屋に駆け込んで行った。
私にすれば 一人戦場に取り残された気分だ。
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