192人が本棚に入れています
本棚に追加
宝井さんと少しばかりの距離を保ち 長い廊下をひたすら歩いていると、突然 彼女が振り返りながら言った。
「ね、つかぬ事を聞くんだけど、望月さんてさぁ」
「はいっ!」
早速 何かマズいことをしでかしたのだろうか。
今日の私は、出勤して朝礼で挨拶して…
「籠島 ケン、好き?」
「はい?鹿児島県?」
本日の言動を思い起こしてぐるぐる回っていた頭に、さらなる疑問符が湧き上がる。
なんだ、この唐突な質問は。
鹿児島県が好きか嫌いかなんて、考えたこともない。
どう返事をしたら良いのやら…
「望月さんはどう思う?籠島 ケン」
宝井さんの歩みが止まり、ジトッと私の顔を覗き込む。
「す、好きとか嫌いとか、よくわからなくてっ」
「そっか、残念」
宝井さんは肩を落とした。
残念なんて…私、返事を間違えた?
でも鹿児島県の知識なんて、西郷どんと桜島と黒豚と…あと何だっけ。
知った被りして話を合わせボロが出たら、関係が気不味くなることは 半年間のOL生活で学んだ。
最初のコメントを投稿しよう!