謎のモテ期は突然に

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宝井さんと少しばかりの距離を保ち 長い廊下をひたすら歩いていると、突然 彼女が振り返りながら言った。 「ね、つかぬ事を聞くんだけど、望月さんてさぁ」 「はいっ!」 早速 何かマズいことをしでかしたのだろうか。 今日の私は、出勤して朝礼で挨拶して… 「籠島(かごしま) ケン、好き?」 「はい?鹿児島県?」 本日の言動を思い起こしてぐるぐる回っていた頭に、さらなる疑問符が湧き上がる。 なんだ、この唐突な質問は。 鹿児島県が好きか嫌いかなんて、考えたこともない。 どう返事をしたら良いのやら… 「望月さんはどう思う?籠島 ケン」 宝井さんの歩みが止まり、ジトッと私の顔を覗き込む。 「す、好きとか嫌いとか、よくわからなくてっ」 「そっか、残念」 宝井さんは肩を落とした。 残念なんて…私、返事を間違えた? でも鹿児島県の知識なんて、西郷どんと桜島と黒豚と…あと何だっけ。 知った被りして話を合わせボロが出たら、関係が気不味くなることは 半年間のOL生活で学んだ。
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