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「吉田さん、お会計出来ましたよー」
「…」
「吉田さーん!お会計が」
「 妃芽ちゃん。吉田さん、最近 耳が遠くなって 聞こえとらんと思う」
そうか…やはり聞こえが悪くなっていたんだ。
「あ、じゃあ 私がそっちに行きます」
私は立ち上がり、待合室へ向かおうとした。
すると、カズさんが にこやかに手を上げて制止する。
「ええよ、ワシが言うから。吉田さん!妃芽ちゃんが呼んどる!」
「…」
「おーい、アンタ生きとるか?目ぇ 開けたまま死んどるんと違うか?」
「こらこらカズさん、それはシャレにならんわー。吉田さんは二年前、目を開けたまま泡吹いて死にかけたんじゃし!」
じわじわと、待合室に笑い声が広がった。
エグい話なのに怒る人なんていない。
寧ろ、和気藹々としている。
この職場は、流行りの髪型やメイクやネイルなんて必要ない。
仕事中は白衣を着用すればよく、特に服装を気遣わなくて済む。
何より 皆さんに清潔感と安心感を持ってもらえれば それで良いのだ。
ーー私にとって まさに天国。
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