月夜のラプソディ

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***** 「吉田さん、お会計出来ましたよー」 「…」 「吉田さーん!お会計が」 「 妃芽(ひめ)ちゃん。吉田さん、最近 耳が遠くなって 聞こえとらんと思う」 そうか…やはり聞こえが悪くなっていたんだ。 「あ、じゃあ 私がそっちに行きます」 私は立ち上がり、待合室へ向かおうとした。 すると、カズさんが にこやかに手を上げて制止する。 「ええよ、ワシが言うから。吉田さん!妃芽ちゃんが呼んどる!」 「…」 「おーい、アンタ生きとるか?目ぇ 開けたまま死んどるんと違うか?」 「こらこらカズさん、それはシャレにならんわー。吉田さんは二年前、目を開けたまま泡吹いて死にかけたんじゃし!」 じわじわと、待合室に笑い声が広がった。 エグい話なのに怒る人なんていない。 寧ろ、和気藹々としている。 この職場は、流行りの髪型やメイクやネイルなんて必要ない。 仕事中は白衣を着用すればよく、特に服装を気遣わなくて済む。 何より 皆さんに清潔感と安心感を持ってもらえれば それで良いのだ。 ーー私にとって まさに天国。
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