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午後の診察が終了し、待合室で掃除機をかけている時だった。
「妃芽ちゃん、ちょっといいかな?」
ガーガーと掃除機の吸引音が響く中、振り向くと 渉先生が立っている。
持病の腰痛が酷いという院長先生に代わり、今日はお昼から渉先生が診察に来ていた。
「はい?」
スイッチをOFFにして直立すると、先生は待合の長椅子に腰掛けるよう 私を促す。
「あのね、妃芽ちゃんに折り入って相談があるんだけど」
長椅子に座った渉先生は、そう切り出した。
「僕が勤務している月見山でさ」
渉先生は、本来は月見山総合病院の内科医ドクターだ。
この辺りで一番大きな病院で、小さなクリニックでは対処出来ない症例の患者さんは 大抵 月見山病院送りになる。
医師も大勢いて 曜日や時間帯での交代勤務だから、渉先生も勤務の合間をみては 自分の父親の布施医院を手伝う事が出来るのだ。
「医事課で急に退職する子が三人も出て…次の子が決まるまで、代わりに即戦力になる子を探してるんだけど」
「はぁ」
「妃芽ちゃん、どうかな?行ってくれない?」
「はぁ?」
…意味がわからないんですが。
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