謎のモテ期は突然に

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そもそも 仕事云々以前の問題だ。 せっかくここで穏やかに仕事をしているのに、なぜ 人がわんさかといる大病院に行かねばならないのか。 お世話になっている渉先生の頼みとはいえ、私は月見山には義理も恩もない。 「断ってください!ていうか、絶対に行きません!」 滅多にない、強い口調で訴えた。 渉先生は苦笑いをしながら、腕組みをする。 妃芽ちゃんがそこまで言うなら…という言葉を待っていたのに 「あのね…最近 親父の腰痛も酷いし、暫くここを休診にしようと思う」 先生から、信じられない台詞が飛び出した。 「親父は無理にでも入院させて治療に専念させる。ついでに里美も、ここらで少し休ませようかと」 「え…」 「全部うちの家族の都合だから、君を無職にさせる訳にはいかない。このタイミングでの月見山の話、何かの縁だと思ったんだよ」 急に先生は、マジメ腐った顔で私をジッと見た。 「君は良く働いてくれるし、馴染みの患者からも評判はいいし、もちろん こっちとしてはすごく助かってる。感謝してます」
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