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「いい子にはご褒美だな」
鵜瀬がニヤリと笑う。
カチャカチャとベルトを外し始める男を前に、英理は心の中で小さく嘆息を吐いた。
あぁ、やっぱりか。
きっともうそれから逃れる事は叶わないのだと悟る。
散々な目にあって理解できた事。
英理にできる事は抵抗や反抗する事ではなく、男の気がすむまで肉体を捧げる事なのだ。
とにかく耐えろ、と心の中で何度も唱える。
突っ込んで出してしまえば男の気も済むかもしれない。
好きでもなんでもない奴に突っ込まれるなんて死んでもごめんだし、そんなことしてくるなら逆に殺してやるくらいの勢いだった。
しかし、この男は例外だ。
素直に従わなければこちらが殺されかねない。
鵜瀬のやり口にはしっかりとした目的や根拠がある。
英理を罰する為に、英理を屈する為に用意された計画。
男は必ずそれを実行し目的を遂げるまでこの行為を辞めるつもりはないだろう。
そこまでして英理に執着する理由はなんなのだろうか。
それは全くわからない。
しかし、ただの折檻や報復にしてはやり口が用意周到であるし、ただならない執着を感じる。
鵜瀬がこれを実行するまでの間にどれだけの労力を使い、どれだけ英理を監視し、どれだけ英理のことを考えていたのか。
そう思うとなぜだか少し肌が粟立った。
それは恐れと興奮が入り混じったもの。
違う。
慌てて頭の中で否定する。
たかが管理人の中年のあぶない男に屈服させられて興奮するなんてあり得ない。
英理はこれまでそんなプレイに全く興味はなかったし、マウントは取られるよりも取ることの方が多かった。
俺は変態じゃないしマゾでもない。
そう思いながら顔を背けていると、ジ…とジップが下ろされる音が聞こえてくる。
少し気になってしまい、盗み見るように目線だけをそちらへ流す。
しかし次の瞬間、その壮絶な光景に息を飲み、英理は目を凝らしてそれをまじまじと見つめてしまった。
くたびれたズボンの中から取り出された男の性器がとてもじゃないが凡庸といえるものではなかったからだ。
大きさや長さがどうこうというわけではない。
男のそれにはピアスがみっちり嵌め込まれていた。
しかも一つではない。
ざっと見ただけでも5つ以上は空いている。
禍々しい凶器、畏怖の塊。
異質で異様としか言いようが無い男の性器を見つめながら、英理は震える唇で紡いだ。
「…な…んだよ…それ…」
恐怖に慄く英理の反応を見て、鵜瀬が不気味な笑みを浮かべる。
「いいだろ?今からこれでたっぷりと可愛がってやるからな」
くつくつと笑う男を前に、英理は再び逃げ出したい気持ちに逆戻りした。
自慢気に見せつけてくる男のピアスだらけのペニスが英理の視線の先でグッと硬度を増すと、皮に埋もれていたバーベルが張りつめた肉棒の表面に浮き出てくる。
あまりのグロテスクなその姿に思わず悲鳴をあげそうになった。
亀頭を上から下まで縦に垂直に貫通させたもの。
亀頭を左右から水平に貫通させたもの。
陰茎の先端を亀頭のカリの部分を跨ぐように貫通したもの。
そのどれもに太いバーベルが嵌められている。
そんな場所にどうやって開けたのだろうか。
とんでもない場所から場所までを長いバーベルが貫通しているのだが、特にペニスに突き刺さるように垂直に貫通したものと水平に貫通したピアスは確実に尿道を通過しているように見えた。
英理の耳朶もピアスでみっちりと埋め尽くされているが、耳朶と性器とでは全然違う。
男の最も重要でかつ弱い場所に穴を開けるなんて尋常な奴のする事じゃない。
改めて鵜瀬の不気味と異常さを思い知り、英理はぶるりと身を震わせた。
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