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 その夜、カフカの続きを読んでいると、ノックの音がした。 「どうぞ」  佐渡先生が入ってきた。やはり、昼とはまるで別人だ。 「やあ、文学青年。カフカか・・・ふふふ、病んでるね」 「病んでるのは、カフカだ。僕じゃない」 「そうか。でも、皆はそうは思わない。君は精神病患者、哀れなグレゴール・ザムザにすぎない」 「先生は何を言いにきたのですか?」 「何かを言いに来てるわけではない。診察したいだけさ。君は興味深い患者だからね」 「興味深い?」 「そう、君が狂気を自覚しているのか、否か?」 「僕は狂ってない」 「やはり、自覚していないのだね。いいだろう。だが、即答ではつまらない。考えていない証拠だ。君はバウムを切り裂き、紫の象を描き、暴力を振るった」 「それは、怒りだ。怒りの表現だ。理解できない行為ではない。僕の思考は支離滅裂ではないし、常軌を逸した行動でもない」 「それが、君の定義する狂気か。では、『理解』とは?『常軌』とは?どう定義する?」 「それは・・・」  僕は口ごもってしまった。
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