夏の暑さと君の熱さと

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夏の暑さと君の熱さと

奴に最初に会ったのは、中2の初日。 私が通っていた、私立の名門中学である帝東学園に転入してきたのだ。 伝統と品格、実力を兼ね備えた超名門校であり、一応エスカレーターで幼稚舎から大学まで併設されてはいるのだが、東大京大早慶上智などの有名大への現役合格率も高い。 それだけに、入試の倍率はとても高い。 噂では20倍前後らしい。 学費もイギリスのパブリックスクールもびっくりの、口に出すだけで震えが止まらなくなるくらいのお値段。 そんな学校に、私のような貧乏ど庶民が生徒として入学出来たのも、言葉に出すのが少々躊躇われる事情が重なった結果である。 これは言うなれば、小学校高学年時代に過ごせたはずの、楽しい子供としての時間を、Nのカバンで有名な某進学塾へと貢ぐことによって得た対価だ。 私自身への対価ではない。 「有名中学校に通って、誰からも文句を言われないステータスを手に入れたい!」 という私のわがままの為に、何枚もの貴重な諭吉様を、自分の日常生活と楽しみを全て捨ててまで、電車の始発から終電の時間まで働くことで湯水の様につぎ込んでくれた、シングルマザーというだけで差別を受け続けていた母への対価だ。
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