君の涙は冷たかった

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 今日も極力、人とは関わらないよう、教室の端で文庫本を読んでいる。  これはいつも通りの事だ。何も変じゃない。 もっと言えば、この教室には、もっと変な人がいる。  雨風雪乃だ。  彼女の話す姿は、誰も見たことがない。  いつも僕から、反対側の席の端で、特別何かをしているというわけではなく、何もせず、ただじっとしている。  そんな彼女を見て、変な人だと思っていた。  まぁ、人のことは言えないのだけれども。  そんな僕でも、彼女とは違うところがある。  それは、ある一人に話しかけられる事だ。  人とは関わりたくない僕にとっては苦痛でしかないが、彼女よりはマシだと考えると心も楽になる。  「町田ー!宿題見してくれよ!」  こいつだ。  「••••••嫌だよ」  僕がそう答えると、彼は不機嫌そうな顔を見せてきた。  「いいじゃん!町田は頭いいんだからさ!」  「僕たち、もう中二だろ?去年も同じこと言ってたじゃないか。いい加減にしろ」  そう言うと、彼はむすっとし、僕の前から消えていった。  しばらく彼の様子を見てみると、驚きの行動に出た。  「雨風さーん!宿題見してー!」  何をやってるんだあいつは。  突然の出来事に、僕はもちろん、それ以上に彼女が困惑していた。  
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