偽善

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偽善

俺にかまうな。 「君、こんな時間に何してるの」 生活指導員の連中が俺に声をかける。 夜の繁華街。 「母親が男引っ張り込んでセックスしてるんで、部屋に帰りたくないんでブラブラしてるんですけど」 アホ面の大人が顔を見合わせている。 「誰か一晩泊めてくんない?親の喘ぎ声聞いてらんないっすよ」 さあ、どうする。 16歳の俺を警察にでも連れていくのか。 俺はイライラしていた。誰も責任なんて取れやしないのに何の「指導」なんだ。 帰って風呂入って寝てろ。 いつもは24時間営業のファミレスなんかで時間を潰していたがそれも飽きて好奇心で夜の街に散歩がてら来てみた。 もちろん知り合いもいないし働いている友人などいない。華やかなネオンに興味が湧いただけで悪いことはしていない。 『案内所』と書いてある1角、中は大きくて綺麗な女の人のパネル。その外にたむろしているキャッチの男たち。 大人だって違法行為してるじゃないか。あっちを取り締まれよ。 おい無能な小太りのジジイとババア。結論の出ない不毛な話し合いしてないで俺を開放してくれ。 酒もタバコもしていない、ちょっと散歩して時間を潰してるのってそんな悪い?青少年なんとか条例?知らねえよ。 「俺の友人が何か?」 その時背後から低い男の声がした。 全員の視線がそちらに向く。 大人の意味ありげな目線と、何も知らない俺のきょとんとした顔。 背の高いグレーの髪の男が優しい笑顔でこちらを見ていた。
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