野外の行為

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勝手に終わると男は俺のポケットに金をねじこんだ。 「ありがとう、かわいかったよ」 俺を個室から出して近くのベンチに座らせてどこかへ去っていった。 何度もイカされて体に力が入らない。 そんな状態のとき紘一さんからのスマホが鳴った。 「…助けて」 その一言だけ言ったのを憶えている。 しばらくして意識がはっきりしてきた時、目の前にさっきの小太り男が強面の男たちに捕まって、俺は紘一さんに体重を預けてベンチに座っていた。 「聡にいたずらしたの、コイツ?」 俺の髪を撫でながら耳元で聞いてくる。 ぼんやりした視界にあの男の顔が見えた。 「…うん」 「いかにも」怖い大人たちに囲まれて変態オヤジが震えている。 「殺せ」 紘一さんは男たちに命令して、俺をそっと立ち上がらせた。 グレーの髪ごしに見える彼の横顔は恐ろしいくらい無表情で、母親が言っていた噂は本当なのかもしれないと思った。 「歩ける?」 俺は頭がくらくらして紘一さんの服を握って体勢を保っていた。 タクシーを拾うまでもない近距離の俺の家まで抱いて運んでくれたようだった。 インターホンが鳴ってドアを開けた母の小さな悲鳴が遠くで聞こえた気がしたが俺の意識は虚ろで現状を認識できない。 シャワーを浴びている感覚がして自分のベッドに横になった感触。 全部紘一さんがしてくれたのだろうか。
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