偽善

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こんな年の離れた友人なんかいないけど。 「あ、神田さんのお知り合いでしたか。これはどうも」 目障りな大人たちが潮が引くように去っていった。 それを無感情にじっと見ている知らない人。 「助かったけど、誰?」 俺の不躾な質問に、笑顔を向けられた。 「…なに?」 「こんな綺麗な子がうろついてたら危ない所だよ、ここは」 そうなの? 「散歩してただけなのに?」 俺の幼い答えに意表を突かれたのか彼は声を出して笑った。 「散歩するなら明るい昼間に公園でも行きなよ」 グレーの髪がゆれる。着崩した黒のスーツからいい香りがした。 意味はないけど俺はいらついた。 「母親が男と寝てる時間に家にいたくないから外にいるんだよ!家庭の事情に文句あんのか!」 ごめんごめんと言いながら男はまだ笑っている。 「君、何歳?」 「16」 「未成年か。お兄さんとお茶でも飲まない?」 「変なナンパ…」 「だってお酒は飲ませられないでしょ。ちょっと蒸し暑いし涼しい所行こう」
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