新しい土地

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俺と美智雄さんで選んだ新しいマンション。 新築でエントランスも広くて綺麗、二人暮らしでは少し広いお洒落な部屋に決めた。 「聡と離れて暮らすなんて耐えられない」 あれ以来美智雄さんは俺から離れなくなり一緒にいる時間が多くなった。 関係は急速に密になり、二人で同居することに異論はないが、俺の不注意でまた誰かを不幸にしてしまわないか不安になる。 「大学から職場までけっこう距離あるし不便でしょ。俺は近くのアパートでも借りて学校行くから」 「会社はクルマで行けば30分くらいだから平気。それに1千万なんてすぐなくなるよ。俺が生活費全部払うから一緒に住もう」 俺の体にすがりついて懇願する姿に負けた。 見た目に反して孤独に弱い寂しがり屋で子どもみたい。 初対面の時に感じた冷徹そうな印象が一気になくなった。 行為が激しい美智雄さんと一緒に住んだら体が壊れると思って何とか距離を置こうとしたが無駄だった。 観念して同居することに了承した。 今もエレベーター内でキスされている。 「…誰か、乗ってきちゃう」 「挨拶すればいいから」 「あ、ちょっと待…」 今にも俺の服を脱がしかねない彼を必死で止める。 『美少年』しか武器のない俺だが、ここまで効くとは思わなかった。 これを利用してお金儲けもできたかもしれないが、それは紘一さんが全力で止めるだろう。そう思って真面目に生きて、せめて結果を出そうと決めた。
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