新しい土地

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早朝、激しくドアを叩く音が聞こえてしぶしぶ美智雄さんが起きてドアを開けると数人の人たちが何か紙を突きつけて入り込んでくる。 TVでよく見る犯罪者を逮捕する時の突入シーン。 状況が理解できず罪状は聞き取れなかったが美智雄さんはその場で逮捕、連行されていった。 裸のままベッドに取り残された俺を見た警察官が軽蔑の眼差しで俺を見てくる。その差別の目を睨み返したが俺のほうが分が悪い。 「話聞かせてくれる?」 そいつらの上司だろうか、いかにも叩き上げの中年刑事が笑顔で部屋に入ってきた。俺の事も調べあげているはずだが何を聞きたいのだろう。 部屋着を着て任意で事情聴取に応じる。出会いから同棲するまでの私生活なことを聞かれただけで形式的な雰囲気だった。 いまさら聞くことはないんだろう。 俺のほうが聞きたいことがたくさんある。 「彼は何をしたんですか?あの人は何者なんですか?」 畳み掛けるように問いかける俺に、一瞬躊躇した刑事だったがオフレコと断って教えてくれた。 「詳しくは言えないけど、詐欺と脅迫。取り調べはこれからだから正式な罪名はニュースを見て」 ダンボールに押収品を詰め込んでいた連中が部屋を出ていくと俺の目の前にいた刑事も立ち上がって軽く挨拶して出ていく。 大きなソファと俺だけ残された。
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