新しい土地

9/11
前へ
/71ページ
次へ
緊張が少しとけると次は疲労感が襲ってきて、大きなソファに大の字に寝転がる。 これからどうしようとか考えなくてはいけない事がたくさんあるのに現実感が全くない。 この数ヶ月はなんだったんだろう。 「これは大きな態度で余裕ですね」 閉めるのを忘れたドアから男が一人、勝手に部屋に入ってきて俺を見た。 ぐるりと部屋を見渡して 「大きな部屋」 一言呟いた。 そうだ、ここを出なければいけない。 ゆっくり起きてあらためて男を見ると、シルエットに合った高そうなスーツを着こなした細身の男性。 髪は整えずそのままな感じでそこだけ違和感だった。 余裕なふりして本当はかなり焦ってここに来たのかもしれない。 「誰?」 「紘一の友人」 「…え!?」 「かもしれない」 男は俺を見て笑うのを我慢しているような顔をしていた。 「こんな家賃の高い部屋に住んでたのか美智雄は。そりゃどんだけカネがあっても足りないわ、はは」 お前のせいだよ、そう言われている気がする。 「キミこのままここに住むの?」 ポケットに手を突っ込んで部屋のあちこちを見ている。俺にはここに住めるだけのお金はない。かといって実家にも帰れない。 どこか安いアパートでも見つけて引っ越すしかない。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加