新しい土地

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「知らない人に個人情報を教えたらダメ」 「…え?」 「詐欺に利用されちゃうかもよ」 詐欺、その言葉に過敏に反応した。 美智雄さんの罪状のひとつが詐欺だった。 「電話番号ひとつでもいろんな利用法あるからね」 その言い方が紘一さんに似ていた。 じゃあどうやって連絡したらいいんだろう。どうせ取りにくるなんて不可能だと思って俺をからかっただけなのか。 「ソファのこともあるし今回は特例で。これからは気をつけな」 「…はい」 そういって電源を入れ直したが、電話番号を交換する前に名前を教えて欲しかった。 「気がついた?俺の名前も知らないで番号教えるの、危ないよ」 俺を諭す言い方、態度、言葉遣い、まるで紘一さんのようで本人がいるような錯覚がする。 「080…」 いきなり言い出したのであわてて押していく。 「名前は山中伊純」 「どんな字ですか?」 「伊藤さんの伊に、純粋の純。これでいずみ。で、キミは下田聡」 どうして俺の名前を知っているのか聞く前に、番号、と事務的な口調で言われた。
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