それから

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それから

新しく住む場所を探すことから大変だった。 たまたま退学した先輩がいて空室があることを同級生から教えてもらい、そこに移動した。 持ち込んだ荷物は勉強机と小さなタンス、ベッドは部屋に入らないから布団を買って、改めて新生活が始まる。 学費は紘一さんがくれたお金でまかなっていたが生活費は自分で稼がなくてはいけなくなり、バイトに明け暮れる日々だった。稼いでもすぐ生活費に消えていく。昼のバイトなんでたいして稼げない。 大学に通うより仕事に行く時間のほうが長くて、学生なのにこれでは本末転倒だ。 「聡はカッコいいんだし、夜働いてみたら?」 空き室を教えてくれた友人がしきりに勧めるがどうも抵抗があって踏み出せない。あんなに好きだった夜の風景も、今は敬遠する世界になった。 疲労だけがたまっていく。無意識に贅沢な生活に慣れてしまっていたのだろうか。 自分で働いて生活した経験がない。 少しだけ夜も働いてみようか。 時給を眺めなからどうするか迷っていた。 「お前どうやってやりくりしてるの?」 こいつ一人しか相談相手がいないいつもの友人に聞いてみた。 「パパ活」 「…は?」 彼の狭い部屋で予想外な答えが返ってきて俺は固まった。 「下田だってスポンサーいるじゃん。入学してからまわりの噂で持ち切りだったぜ。今引っ越したってことはそいつと切れたんだろ?だったら新しい奴探せばいいじゃん」
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