232人が本棚に入れています
本棚に追加
「伊純さんは何者?」
俺がそう言った途端、大きめの唐揚げを口に突っ込んできた。
「あはは、エロい顔」
何を連想したのか、伊純さんがニヤニヤしている。
「サイトのプロフィール読んだ?」
「うそだって書けるじゃん、あんなの」
もぐもぐ食べながら反論してみる。
「悪い人」
「幅が広い」
ようやく飲み込んで喉で止まってる感覚がするのをハイボールで飲み込んだ。
「逆に聞くけど、いい人に見える?」
俺は首を横にふった。
「まあ普通のサラリーマンではないな。事業家?経営者?社長?なんだろ」
言いたくないのか言える仕事ではないのか、伊純さんは曖昧なことを言う。
「逮捕される案件やってるの?」
この前みたいに朝から警察が来るような人物なら距離を置きたい。
「聡だって悪い子じゃん」
「俺?どこが?」
「可愛い顔で男を誘惑して利用して、価値がなくなったら次に行く、タチ悪いわ~」
「…なにそれっ」
俺が立ち上がりそうになるのを肩を押さえて止める。
「怒るなって」
立ち上がった勢いで前に流れた髪を梳いて俺の顔をじっとみつめた。
「褒め言葉だから」
「そうは聞こえなかった」
気分が悪くなって帰りたくなってきたが伊純さんがぐっと俺の腕をつかんで離さない。
急に立ち上がったせいかフラフラする。腕を離してくれないのはそれを支えてくれているのかもしれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!