落とし穴

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「まだお金返したいって思ってる?」 半笑いで俺の体に自分の欲望を差し込みながら伊純が聞いてくる。 俺は弱々しく首をふった。 「だよな。むしろ慰謝料にしたら安い金額だし。自分の体がたった30万円の価値しかないなんて言われたら俺なら相手を殺すかもね」 「…その言葉、言わないで」 「どの言葉?」 「‥殺すとか、そういうの」 理由を探して伊純さんはしばらく考えていたが、やがて嫌な笑みを浮かべて俺を見た。 「聡はさあ、学習能力ないの?」 ゆっくり抜き差ししながら俺の耳元まで顔を近づけてくる。俺は精一杯睨みつけるがその程度でひるむ相手じゃない。 「よっぽど過保護に育ったんだな」 「うる‥、さい…」 「自分から弱点言ってどうすんの。まだいじめられたいの?」 少し体を離して胸の突起をぐりぐりとつまんでくる。 「…あ‥、ん…ぁ」 「殺すとか、殺せ、そういう言葉がトラウマなんだろ?お前のせいで1人殺されちゃったし、殺させたのは好きな人だったしで残念な人生だ」 そのとおりだと言いたいのに言葉が出てこない。 「だから警戒しろって何度も言ってやったのにお前全然聞かないからイライラすんだよ」 「大きなお世話‥、だ。離せ…っ」 「だからお前が離せって」 嫌なことを言われるたび、後ろを締め付けてキツくしているようだった。
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