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声が止まらない。 「あ…ああ、…んっ、‥う」 肘だけで体重を支えきれなくて冷たいフローリングに額をつける。 それでも伊純さんは容赦ない。 「…痛い‥よ」 「ホントだ、赤くなってる」 俺の腕をひねるように肘を見て、抜かずにまた体を抱えた。 「しつ…こ‥、もうやめ…」 「お前だけ気持ちよくなって終わりか?」 「気持ちよく‥なんか…な…」 全部言い終わる前に俺の透明な密が出ている部分を塗りたくるようにさわる。 「ん‥、う‥、…‥ぁ」 「紘一さんと俺、どっちが気持ちいい?」 「…は?」 唐突に紘一さんの名前が出てきて一瞬理解出来なかった。 「ねえ、どっちがいい?」 急に甘い声色になって伊純さんが聞いてくる。 「答えるまで動かないぞ」 後ろの男は悪い笑顔で俺を見ているに違いない。 それを見たくなくてまた目を閉じた。 もっと気持ちよくなりたい。 今は快楽に溺れていたい。 ここで伊純さんと答えれば欲しい刺激がもらえるのはわかっている。 「…紘一さん」 俺は心の中の大切な人の名前を言った。 俺を拘束している男はおもしろそうに笑った。 「今度面会した時に伝えといてやるよ」 それは他の男と寝たことを同時に報告されることと同じだった。
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