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申し訳ないくらい美智雄さんの事を忘れていた。 「美智雄もかわいそうな奴だな忘れられて」 ソファでタオルケットにくるまりながら久しぶりに聞いた名前の人物を話をする。 伊純さんのほうを向いて横になっている俺のくびれラインをなぞられて気持ちいい。 「向こうも俺のことは忘れてるんじゃない?」 「あいつはかなりお前にご執心だったぞ。ストーカーになるタイプだな。危ねー」 美智雄さんに関わったことを後悔したが、今さら感がすごい。 このソファは大きくて二人寝転んでもせまくない。 「俺が遠くに引っ越すまでしか、伊純さんに会えないの?」 「そうなるな」 突然の別れ話に俺の感覚が追いつかない。 伊純さんにとっては紘一さんに頼まれてる、面倒くさい『お願い』。 「そっか…」 ずっと一緒にいて、どこまでも着いてきてとは言えない。 「…じゃあ今は守りきってね」 俺は抱きつくように伊純さんの腰に手をまわす。 いつも意地悪で俺に厳しい。 情なんか移すものか。こんな奴割り切ってやる。 頭を引き寄せられて唇を貪るようにキスされるまでは心の中で悪態をついていた。 唇が離れた時には、頭が真っ白で体が反応している。 「俺、逃げない。ここで決着を決める」 「まあ頑張れ」 就職先によるけどねと言って伊純さんにしがみついた。
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