6/7
前へ
/71ページ
次へ
外は暑く、涼しい部屋に閉じこもって遮光カーテンで暗くして映画を見る。 俺はこういう時間がもったいないと思う。だったら話でもしていたい。 「俺が見たいんだから、嫌なら帰れ」 ご丁寧にポップコーンまで用意して俺の後ろに座っている伊純さんが不機嫌に言う。 帰れと言うわりに両足で俺の体をはさんで肩に顎をのせて固めている。 あいかわらず言うこととやることが違う変な人。 「女みたいに結論のない無駄話でもしたいのか?」 「した~い」 「お前話題ないだろう」 伊純さんはさっきからずっと後ろ髪を撫でている。いい加減くすぐったくなったので 「話題はないけど、とりあえず髪さわるのやめて」 んふふふ、となんかいやらしい笑い方をして耳元に伊純さんの口が近づく。 「のびてる髪をさ、ふわっと結んでるのってやらしくない?」 「それはあなたの好みでしょ」 「俺に染まるのも、イメージ変わるよ」 そうやってじゃれている間に、映画はただのBGMになった。 ここにいる時だけは周りに警戒しなくてもいい。 外に出たらまた周りを警戒して、アパートのまわりに誰もいないか確認してから部屋に入る。 後ろで俺の体で遊んでいる男を無視してポップコーンに手を伸ばした。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加