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よく見ると俺は父親に似ている。 古びた写真でしか見たことはないが、親父が俺の年だった頃にそっくりだ。 親子だから当たり前なんだけど。 やっぱりこの顔で生きていたんだろうか。 だとしたら血は争えない。 そんな事を考えていると、手鏡がするすると舞っていった。 「いつまで眺めてるんだ。顔が綺麗って言われるのキライじゃなかった?」 「前の俺と今の俺、どっちがいい?」 「知らねえよ。自分の好きにしたらいいだろ」 「じゃあ元に戻そうかなあ」 伊純さんが腕を胸にまわしてくる。 胸の突起を巻き込んでぞくっとした。 「そのままにしておけ」 首筋を舐められて鳥肌が立つ。 「…、うん‥」 有無を言わせない口調に、それ以上は何も言えなかった。 「俺の服やるよ。イメチェンしたいんだろ」 「うん…」 力の抜けた体を伊純さんに支えられてうごめく指の刺激に逆らえない。 だんだん紘一さんのことを忘れてしまう。 どんな感覚だったか、もう思い出せない。 そして今、全然違う男の部屋で喘いでいる自分が浅ましかったが、理性が飛ぶと体が自然に快楽を探して伊純さんを求めた。
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