蓮の花

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蓮の花

伊純さんがいつもゆったりとした服を着ているには理由があることを最近知る。 ある日ぬるい風が吹いて裾がふわりと舞った時背中に銃が見えた。 いつも持ち歩いているとは思わない。抱きしめた時そこに違和感はなかった。 そして最近体格のいい男が俺に付かず離れずついている。 「美智雄、出てきたぞ」 伊純さんの言葉がまるで宣戦布告のように聞こえた。 俺を好きになってくれた人が今度は敵になって現れるってことか。 いつもの居酒屋で唐突に言われた現実に、俺はどう答えていいかわからない。 そんなに俺に執着しているだろうか。 「あいつの心中までは知らねえけど、紘一が守れっつんだからやるしかねえだろ」 思えば紘一さんと伊純さんの関係も詳しくはわからなかった。 「紘一さんとは、どういう関係なの?」 「俺とお前の関係みたいな感じ」 不機嫌に言い放ってビールジョッキを空にした。 体の関係があるってことだろうか。 「…俺は、伊純さんの事嫌いじゃないよ」 「ずっと嫌いって言ってたのにどういう風の吹き回しだ?」 ボディガードの男は入り口から入ってくる人間を常に監視していた。
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